大規模修繕の費用や修繕積立金などの目安を紹介!不足時の対策も併せて
「大規模修繕の費用の目安はどれくらいなのか?」
「費用の目安を知るための方法とは?」
大規模修繕の費用は、ほかの工事に比べると高額です。
工事が成功するかどうかと同じくらい、心配に思う人も多いでしょう。
大規模修繕は、綿密な計画を立てて準備します。
しかし、目安としてどれくらいの資金が必要になるのか、これからマンションのオーナーになる人、修繕計画を立てようと考えている人は事前に知っておくと安心です。
この記事では、大規模修繕の費用と修繕積立金の目安を解説します。
大規模修繕の費用目安
国土交通省『マンション大規模修繕工事に関する実態調査』と『東京都マンション実態調査結果 2013』を元に、マンションの大規模修繕にかかる総額、戸あたり、工事別の費用目安を紹介します。
大規模修繕の実際の費用は、マンションの規模や劣化症状の進行具合で異なるので、その点に留意して読み進めてください。
大規模修繕の費用総額の目安
国土交通省によると、マンションの大規模修繕の費用総額の平均は、1回目と2回目だと3,001〜3,500万円、3回目なら2,001〜2,500万円となります。
東京都の調査では、分譲マンションの場合、平均で1,000超〜3,000万円、賃貸マンションの場合、平均で3,000超〜5,000万円となっています。
大規模修繕の戸あたり工事の費用目安
次に、国土交通省の調査をもとに、戸あたり工事の費用目安を紹介します。
75〜100万円かけるケースが一番多く、次いで100〜125万円、50〜75万円となっています。
1回目の戸あたり工事は100万円、2回目は97.9万円、3回目以上だと80.9万円が平均です。
大規模修繕の工事別の費用目安
大規模修繕では主に、外壁工事、防水工事、仮設工事などを行います。
外壁工事は、大規模修繕の大部分を占める工事で、塗装やシーリング補修などが含まれます。
東京都の調査では、分譲マンションの約85%、賃貸マンションの約70%が行うという結果になっています。
国土交通省の調査では、24%を占める工事です。
大規模修繕の費用総額が2,000万円だとしたら、そのうちの500万円が外壁の補修に使われます。
防水工事は、屋上やベランダなどの防水層の補修工事のことを指します。
東京都の調査では、分譲マンションの場合、屋上は約80%、ベランダと廊下は約70%、賃貸マンションの屋上が約70%、ベランダと廊下は約40%の割合で行われる工事です。
国土交通省の調査では、大規模修繕の22%で行う工事としています。
総額が2,000万円の工事の場合、約440万円が防水工事にあてられる計算です。
仮設工事には、足場や養生シート、仮設トイレの設置などが含まれます。
国土交通省の調査では、全体の工事の約19%と、大規模修繕の中でも3つ目に大きな割合を占める工事です。
2,000万円の工事なら、そのうちの380万円が防水工事にあてられます。
大規模修繕の修繕積立金の目安
大規模修繕は、「修繕積立金」という特別に徴収した資金を使って行う工事です。
ここでは、修繕積立金について、そして徴収する費用額の目安を紹介します。
修繕積立金とは
修繕積立金とは、入居者から毎月徴収する、大規模修繕のための資金のことです。
積立方法には、計画期間の間、均等な額を積み立てる「均等積立方式」と、最初の積立額を抑えて徐々に値上げしていく「段階増額積立方式」があります。
国土交通省が推奨しているのは、均等積立方式です。
均等積立方式は、金額が値上がりしないので、安定して徴収できる点がメリットです。
ただし、最初から一定の金額を徴収するため、購入してすぐは負担に感じる入居者もいるでしょう。
段階増額積立方式は、月にかかる費用を安く見せられます。
しかし、増額を念頭に置いた方法でもあるため、最初は安くても後々の値上げは避けられず、トラブルの元になることがあります。
修繕積立金の目安
国土交通省による平成30年度の調査では、修繕積立金の平均は11,243円となっています。
しかし、完成年次別に徴収されている修繕積立金の平均額は、昭和44年では26,365円、平成6年では11,413円、平成26年では9,244円と、大きな差があります。
これは、平成27年以降に完成したマンションの7割近くが「段階増額積立方式」を採用しているためです。
どちらの積立方法にもメリット、デメリットがあります。
その点を留意して、入居者の理解を得られる積立方法を選ぶようにしましょう。
大規模修繕の費用目安の算出方法
大規模修繕の費用の算出方法を紹介します。
実際の修繕工事にどのくらいかかるのかは、建物の状態を参考にしなければなりません。
ここでは、大規模修繕を行う前に欠かせない、建物診断について解説します。
建物診断する
建物診断は、建物の状態を知るための検査です。
大規模修繕が必要な時期や、どんな修繕工事が必要なのか、どれくらいの費用がかかるのかなどがわかります。
大規模修繕の予定表である「長期修繕計画」を立てる際に行うのが通例です。
建物診断のやり方
診断方法は、目視や打診などの一般的な外壁診断、サーモグラフィーを使う外壁診断、入居者へのアンケート、ドローンを使った屋根や外壁の調査などです。
建物診断の項目は、大規模修繕の回数に応じて変えることができます。
1回目の大規模修繕は、築年数が13〜16年の頃に行われるのが一般的です。
その時点で、躯体が劣化していることは稀なので、一部を破壊して行う物理調査は行わなくてもいいでしょう。
このように、診断項目を選んで依頼すると、費用の節約につながります。
修繕積立金が不足しそうなときの対策
修繕積立金が不足しそうなときには、
・借入や一時金の徴収
・大規模修繕の延期
・修繕内容の見直し
・管理費の削減
などの方法があります。
修繕積立金は不足しないよう積み立てるのがベストです。
しかし、それができないこともあるでしょう。
以下で解説する対策を知っておくと、不足を起こさないために、事前に備えることができます。
借入や一時金の徴収
公的機関や金融機関から借したり、入居者から一時金を徴収したりする方法です。
借入は、入居者に負担がかからないのがメリットです。
しかし、ローンなので返済しなければなりません。
一時金は、大規模修繕のタイミングや10年ごとなど、決まった周期で入居者から徴収する修繕費用のことです。
入居者に負担を強いる方法なので、理解を得る必要があります。
大規模修繕の延期
大規模修繕の時期を延期し、その間に資金を集めるのも方法のひとつです。
しかし、大規模修繕を延期すると、修繕箇所の劣化が進む可能性が考えられます。
劣化症状がひどくなったり、修繕箇所が増えたりすれば、より費用がかかってしまうことにもつながります。
延期を決めたら、できるだけ早く新しい日程を組み直しましょう。
修繕内容の見直し
修繕内容を見直し、今しなくていい工事を省くと、そのぶんの費用を浮かせることができます。
外壁や屋上の防水層など、設備の古くなった部分の改修だけを行い、インターフォンやバリアフリー工事など、グレードアップは次の機会にするといった方法を試してみましょう。
管理費の削減
マンションの管理費とは、共用スペースを管理する管理人の人件費や備品費、補修費などにあたる費用のことです。
各戸の専有面積の割合に応じて算出され、相場は10,000〜15,000円となっています。
管理業務や加入している保険などを見直し、捻出したぶんを修繕積立金にすることが可能です。
ただし、管理費は毎月、入居者によって支払われるものです。
できるだけ早い段階で管理費の内訳を見直さないと、大規模修繕までに資金を貯めることが難しくなるので注意しましょう。
大規模修繕の費用や修繕積立金の目安を押さえておこう
大規模修繕の費用や修繕積立金の目安を知っておくと、適正な条件での修繕工事を依頼しやすくなります。
実際の費用は、建物の規模や状態によって異なります。
この記事で紹介した費用の目安は、業者に依頼する前に知識のひとつとして押さえ、参考にしましょう。