外壁のクラックは放置すると危険!大規模修繕の方法や修繕費などを解説
大規模修繕が必要な建物の劣化症状のひとつに、クラック(ひび割れ)があります。
大きくなると外観の印象に影響を与えるので、気になっているオーナーや大家さんもいるのではないでしょうか?
放っておくと、躯体へのダメージにもつながります。
この記事では、クラックを放置する危険性や、大規模修繕での補修方法、補修費用などについて解説します。
大規模な建物でクラックを放置する危険性
どのような大きさのクラックでも、放置すると建物に危険が及ぶ可能性があります。
クラックは、コンクリートやALCの外壁にできやすい劣化症状のひとつです。
大規模修繕の際も、必要に応じて補修工事を行います。
補修せずに放置しておくと、
・躯体を傷める
・事故につながる
・資産価値が下がる
など、トラブルを招く危険性があります。
躯体を傷める原因になる
クラックから外壁内部に雨水が入り込むと、内部の鉄筋部の腐食を招く恐れがあります。
腐食した鉄筋は膨張し、内部から外壁のコンクリートを破壊する「爆裂」という現象を起こします。
爆裂によって躯体が傷めば、外壁が剥がれたり、倒壊したりする可能性が考えられるのです。
どんな微細なクラックでも、放置するとどんどんと幅を広げ、雨水の侵入経路になります。
同じ現象を引き起こすことも考えられるため、注意しましょう。
事故につながる
クラックから雨水が染み込み外壁材が傷むと、崩れ落ちる可能性があり、大変危険です。
崩れた外壁材が通行人や居住者に当たれば、大事故につながります。
クラックは、目視ではわかりにくい症状です。
特に、大規模修繕が必要な建物は大きいので、地上からではクラックを見つけるのは困難です。
大規模修繕前の検査だけでなく、定期的なメンテナンスを行い、目視できない部分の状態を確認してもらいましょう。
資産価値が下がる
大きなクラックは、建物の資産価値に影響を与えます。
クラックは、マンションやビルに古びた、劣化した印象を与えます。
新しく、フレッシュな印象のマンションが近場にあれば、引っ越しを検討する入居者がいるかもしれません。
新しく入居を考えている人も同じです。
入居率に影響を与える可能性も考えられるため、クラックは放置しないようにしましょう。
大規模修繕におけるクラック補修の費用相場
大規模修繕におけるクラックの補修は、300〜2,300円/平方メートルが費用の相場です。
建物の規模、下地の状況、立地条件などにより、価格は変わります。
大規模修繕でのクラックの補修は、下地補修工事のひとつとして行われます。
大規模修繕におけるクラック補修の流れ
大規模修繕におけるクラック補修は、足場を開設し、下地である躯体の調査を行った後にするのが一般的です。
下地の調査は、目で確認したり、打診棒を使い、外壁を叩いたりして確認します。
クラックはもちろん、タイルやモルタルの浮き、爆裂の発生有無なども、同じように調査します。
ここで不具合が見つかった場合、下地補修工事が必要です。
下地補修工事では、外壁のクラックの補修以外に、シーリング補修、モルタルやタイルなどの浮きの補修も行います。
外壁の見た目や機能性を改善するために、下地の補修は欠かせません。
適正な補修を行うために、下地の調査もしっかりとしてくれる業者を選びましょう。
大規模修繕で行われるクラックの補修方法
大規模修繕におけるクラックの補修方法には、
・充填工法
・注入工法
・被覆工法
の、3つがあります。
どの工法を用いるかは、クラックの幅で異なります。
以下で、それぞれの特徴を解説します。
充填工法
幅1mm以上のクラック(構造クラックの一種)に用いられる工法です。
充填方法は、クラックに沿って外壁を幅10mm、深さ10〜15mmのU字型にカットし補修材を充填します。
動きがあるクラックには、ウレタン樹脂やシリコン樹脂などのシーリング材を、動きがないクラックには、ポリマーセメントモルタル材を用います。
注入工法
幅0.2mm以上のクラック(構造クラックの一種)に用いられる工法です。
手動だけではなく機械を使い、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの有機系のほか、セメント系、ポリマーセメント系の補修材を利用します。
ただし、職人や作業員の技術力が仕上がりに影響するため、現在は機械を使う補修が一般的です。
使用する材料によっては、コンクリートの躯体と一体化する工法で、大規模修繕が必要な建物の外壁の補修によく使われます。
被覆工法
幅0.2mm以下の細いクラック(ヘアークラックの一種)に用いられる工法です。
塗膜弾性防水材や、ポリマーセメントモルタルなどの補修材を、クラックの表面に塗って覆います。
躯体内部への水や炭酸ガスの侵入を防ぐので、耐久性の向上にひと役買います。
大規模修繕が必要な建物でクラックが起きる原因
大規模修繕が必要なマンションやビルの外壁にクラックが起きやすい理由には、
・コンクリートの性質
・躯体の影響
・塗膜の劣化
・施工方法や仕上げのタイミング
などが考えられます。
コンクリートの性質
コンクリートは、温度や乾燥などの影響を受けて伸び縮みする性質があります。
熱で膨張した後に急速に冷えたり、乾燥のため水分が蒸発したりすることで収縮が起こり、それがクラックの原因になるのです。
躯体の影響
ALCの外壁の場合は、躯体の状態も影響します。
躯体の歪みや、基礎の沈下などが主な原因です。
塗膜の劣化
塗膜が劣化した場合も、クラックが発生します。
この場合は、0.3mm以下のヘアークラックである場合が多く、すぐさま深刻なトラブルを引き起こすものではありません。
しかし、放置は危険です。
クラックが大きくなり、躯体まで水が染み込むと、外壁が剥がれる原因になります。
たとえヘアークラックでも、発見したら業者に依頼し、メンテナンスするのが得策です。
施工方法やタイミングの問題
施工方法や仕上げのタイミングが不適切だと、クラックの原因になることがあります。
コンクリートの場合は、硬化中に振動を受ける、乾燥の速度が著しく早い、打ち重ね(古いコンクリートに新しいコンクリートを流し込むこと)の間隔の問題などに影響を受けやすいです。
ALCの場合は、不適切な建具や内装工事の影響、取り付け方の不具合も問題になります。
大規模修繕後のトラブルでクラックを起こさせない方法
コンクリートやALCの外壁の建物には、劣化症状としてのクラックはつきものです。
しかし、大規模修繕後のトラブルとしてのクラックは、事前の準備や心構えで防ぐことができます。
ここでは、大規模修繕後のトラブルとしてのクラックを起こさせない方法を紹介します。
経験豊富な優良業者に依頼
大規模修繕は、経験豊富な業者に依頼しましょう。
どのような工事でも、業者選びは重要です。
業者選びをしっかり行うと、工事の仕上がりはもちろん、居住者への対応やアフターケアなども安心して任せられます。
業者の実績について知るには、ネットのクチコミや業者のホームページなどが参考になります。
実際に、その業者が大規模修繕を行った建物を見学するのも方法のひとつです。
チェック体制を整える
大規模修繕の進捗や各工程の仕上がりなどを、工事の管理者が定期的にチェックする体制を整えましょう。
工事について不明な点がある場合は、その都度、現場に確認し、問題がないかクリアにします。
工事の間は、管理組合や修繕委員会、業者、コンサルタントなどと定期的な打ち合わせをし、進捗の確認を行うようにしてください。
大規模修繕ではクラック補修が必須
大規模修繕が必要な建物の外壁には、コンクリートやALCを使うのが一般的です。
クラックは、それらの外壁に起こりやすい症状のひとつです。
微細なクラックはそこまで心配ありません。
しかし、放っておくと躯体を傷める原因になります。
どのサイズのクラックでも、見つけた場合は補修が必須といえます。
大規模修繕のときだけではなく、見つけた場合は業者に検査や補修を依頼するようにしましょう。